2026年のノーベル化学賞に、東京理科大学名誉教授の硤合憲三さんと、フランスのアンリ・カガンさんが選ばれました。日本の研究者の化学賞は、2025年の北川進さんに続いて2年連続です。
ニュースには「鏡像異性体」「不斉」といった言葉が出てきました。聞き慣れない言葉ですが、どちらも高校の化学で習う内容です。
この記事では、受賞した研究の中身と、それが教科書のどこにつながっているかを紹介します。
目次
今年の化学賞は、何を明らかにした研究か
生き物の体をつくるアミノ酸には、右手と左手のように、鏡に映した関係にある2つの型があります。ところが、生き物のタンパク質に使われているのは、ほぼ片方の型だけです。
なぜ片方だけなのかは、長いあいだの謎でした。
硤合さんは、反応でできた分子が、自分と同じ型の分子をつくる手助けをする反応を見つけました。はじめにほんのわずかでも片方の型が多いと、反応をくり返すうちにその型ばかりが増えていきます。この反応は「硤合反応」と呼ばれています。
1995年に科学誌『Nature』で発表した論文では、数%しかなかった偏りが、反応をくり返すことで約9割まで高まることを示しました。生き物がなぜ片方の型だけを使っているのかを説明しうる仕組みとして評価されています。

一緒に受賞したカガンさんは、1986年に、材料の偏りよりもできあがるものの偏りの方が大きくなる「非線形効果」を示しました。受賞理由は「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒の発見」です。
「鏡像異性体」とは
右手と左手は、指の数も並び方も同じです。それでも、右手の手袋に左手は入りません。鏡に映すと同じ形なのに、重ね合わせることはできない関係です。
分子にも同じことが起こります。同じ原子が同じ順番でつながっているのに、立体的には鏡に映した関係になっていて重ならない2つの分子を、鏡像異性体(光学異性体)と呼びます。

2つの型は、味やにおい、体への働き方が違うことがあります。
- うま味成分のグルタミン酸は、うま味を感じるのは片方の型(L型)です。
- ミントの成分のメントールも、強い清涼感があるのは片方の型です。
薬をつくるときに、片方の型だけを選んでつくる技術が大切になるのはこのためです。2001年に野依良治さんがノーベル化学賞を受賞したのも、片方の型だけをつくり分ける研究でした。
高校化学のどこで習うか
鏡像異性体は、高校の「化学」の有機化合物の単元で出てきます。「化学基礎」のあとに学ぶ科目なので、多くの学校では高2以降の内容です。

教科書でよく例に使われるのは乳酸です。乳酸の分子には、4つの異なる原子や原子の集まりとつながった炭素原子があります。これを不斉炭素原子といい、不斉炭素原子をもつ分子には鏡像異性体があります。ニュースに出てきた「不斉」は、この「不斉炭素原子」の「不斉」と同じ意味です。

アミノ酸も、同じ「化学」の後半で出てきます。グリシン以外のアミノ酸には不斉炭素原子があり、鏡像異性体があることもあわせて習います。
テストでは、構造式から不斉炭素原子を探す問題や、異性体がいくつあるかを数える問題としてよく出ます。紙の上の構造式を、頭の中で立体にして考える必要があるところです。
ニュースの言葉を、教科書でたどってみませんか
「ニュースで聞いた鏡像異性体が、教科書のどこに出てくるのか見てみたい」
「不斉炭素原子の見つけ方が分からない」
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